好きですか? いいえ・・・。





「え?」



落合くんが車椅子を止めた。



「私は親孝行なんてできないんだよ。こんな身体じゃ……。ずっと迷惑かけることになるんだよ? こんな私がいない方がよくない? こんな私がいなければ、お母さんは素敵な人と出会って、恋をして、再婚して……。ううん、そもそも私なんか生まれて来なかったらよかったんだって。」



「そっか……。」落合くんは深いため息をついた。



「それじゃ、死ぬか?」



「へ?」思わず振り返って見た落合くんの顔は月の光に照らされて、不気味だった。



「消えたいんだろ? だったら死のうぜ? オレ、手伝ってやるから。」



そう言って、落合くんは車椅子を猛スピードで進めた。こうやって猛スピードで車椅子を押すことなんてよくあることで、身体に受ける風は気持ちいいものなのに、今日の、今の、この風は不思議と気持ち悪かった。




< 106 / 204 >

この作品をシェア

pagetop