好きですか? いいえ・・・。
「つらいかもしんないけどさ、それは今だけで、きっとこの先は楽しいことが待ってるから。まあもし、楽しいことが待ってなくても、少なくともこの高校生活最後の数か月は財満さんが『楽しかった!』って言えるように頑張るからさ。」
「でも、私なんかに時間費やしてほしくないよ。落合くんは……落合くんはいい人だけど、だからこそもっと楽しい時間を過ごしてもらいたいなって。幸せになってもらいたいなって。だって、いい人には幸せになってもらいたいもん!」
「わかってねえなー。」落合くんは頭を掻いた。
「こうやって財満さんと過ごす毎日が、オレの幸せなんじゃん。」
ここで確信した。やっぱり落合くんは私のことが好きなんだ。でも……。
プップーッ!
クラクションが響いた。右を見ると、車が長蛇の列を作っていた。
「なあ、財満さん。この渋滞ってオレたちが作ってんだよね?」
「そうだね、落合くん。これ絶対怒られるやつだよね……。」
案の定、運転席の窓が開いて、口々に「退けよ!」、「邪魔なんだよ!」、「危ねえだろ!」の怒号が飛んだ。
私たちは慌てて歩道に避難した。大通りには背を向けて、しばらく背中で怒号を受けた。
でも、私たちはチラッと目を合わせて笑った。もちろん、運転手たちには見えないように、そっと。