好きですか? いいえ・・・。
「千代子さん、なんかオレたちのこと誤解してない?」
シャーペンをクルクル回しながら落合くんが白々しく言った。私が脱衣所で落合くんとお母さんの会話を聞いていたことを知らないからそういうことが言えるんだ。
「お母さんのこと、名前で呼ばないで。」
「いいじゃん。千代子さんで。」
「よくない。なんか気持ち悪いし。」
「そうかな? オレ、気持ち悪い?」
「オレ、気持ち悪い。」
落合くんの勉強の理解力は大したものだった。公式を一つ教えると、応用問題も難なく解ける。1聞いて10知るタイプ。落合くんはやればできるのだ。
わけてほしい。その理解力。
「落合くん、私教える意味あるかな?」
「あるよ! 財満さんのおかげでだいぶわかってきたし。」
私はそこがどうも引っかかる。落合くんは本当に勉強ができないのだろうか。勉強をしようとしないだけなんじゃないだろうか。
意図的に勉強しないだけなんじゃないだろうか。
だとしたら、どうして? その問題に対する答えはどんなに頭が良くても落合くんにしかわからない。