好きですか? いいえ・・・。





このまま黙っていると、それこそ「いる。」って言ってるようなものだ。それに「いる。」から派生して、「その相手が落合くん。」なんて誤解を生むかもしれない。



だから、言わなきゃダメ。ダメ……だけど……言えない。



「落合くんは、いるの?」



そして、訊いてしまった。返してしまった。淡くて甘酸っぱい苺ならぬ、苦くて生臭いゴーヤを落合くんに返してしまった。ゴーヤはブーメランのように放物線を描いて、落合くんにぶつかる。でも、それを受け取った落合くんにはそのゴーヤが苺に見えているんだ。



「オレ? まあ、いる……かな……。」



想像通りの答えが返って来る。潰れないようにそっと優しく投げられた苺。でも、私に見えるのは優しくふわっとしたスピードの苺なんかじゃなくて、ピッチングマシーンから放たれる剛速球のゴーヤ。痛くて、苦い。



「そっか。いるんだね。そりゃ好きな人の一人くらいいるよね。そうだよね。」



私はせめてもの償いとして、ゴーヤと卵を炒めて、塩コショウで味付けをして返した。きっと落合くんもゴーヤチャンプルーとして受け取ってくれたに違いない。




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