好きですか? いいえ・・・。





そういえば……。



「落合くん、絆創膏もらいに来たんじゃなかったの?」



「あっ! そうだったー!」落合くんが立ち上がった。



「絆創膏ってどこだっけ……。」



落合くんが辺りをキョロキョロ見回す度に、背負ったままのギターケースが揺れる。大事そうに背負っているギターケース。きっとそこにはギターだけじゃなくて、夢も詰まっているんだろうなって思う。



私の夢は、陸上選手になること、だった。中学から陸上を始めて、走り幅跳びでは県大会で優勝したこともある。次のインターハイでは、うちの高校で初の全国大会出場を期待されていた。病室でガックリと肩を落とした顧問の先生のあの姿は、きっと一生忘れることができないだろうと思う。



「ねえ、財満さん。」



「はい?」



「絆創膏、どこにあるか知らない?」



伊達に保健室に常駐していない。



「そこの棚に救急箱があるよ。絆創膏も入ってると思う。」



「おー、あれか!」



落合くんは棚にある救急箱の持ち手を掴んだ。その瞬間、蓋がパカッと開いて、中身が散乱してしまった。



「クソッ! 誰だよー! ちゃんと閉めとけよー!」




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