好きですか? いいえ・・・。





「念のために、熱測ってみる。」



私はペン立てに立てている体温計を取り出して、ボタンを上から2番目まで開けて、落合くんと目が合い、落合くんが慌てて視線を逸らしたところで、脇に挟んだ。



「……ごめん、何も見てないから。」



「……ううん、大丈夫だから。」



何だか、気まずい空気が漂う。私たちは一緒の部屋で二人っきりで一晩を過ごした仲だけど、付き合っているわけじゃない、男と女。そのことを忘れさせるくらい、落合くんとは生涯の友になれると思う。でも、落合くんは私のことが好きで、私は川上くんのことが好き。



その事実が落合くんに伝わった時、この関係はきっと崩れてしまう。でも、いつまでも崩さないでおくことは、同時に落合くんを縛り付けていることにしかならないことでもある。縛り付けているにことにしかならないことを知っていても、このままの関係を築きたいと思っている。私のエゴは、こんなにいい人を不幸のどん底に落とす、最低なエゴだ。



本当に「ごめん。」と言わなきゃいけないのは、私の方だ。




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