好きですか? いいえ・・・。
テイラーを越える。
お母さんは仕事に行っていて、今この家では熱がある私と、私の額に当てがったタオルを冷やす作業を繰り返す落合くんの二人っきりしかいない。
1つ屋根の下で若い男女が二人っきり……。まさに青春。こんな青春みたいな時間が訪れるなんて、歩けなくなった当初は思ってもみなかった。
歩けなくても、歩ける人と同じような青春を送れるんだ。そして、その青春というカテゴリーに置き去りにしないで、手を引っ張って連れて来てくれたのが落合くんだ。
そんな落合くんのことを好きになれないなんて、縛り付けておくなんて……。
もう嫌だ!
もうこんな関係は嫌だ!
私は川上くんのことが大好き。その気持ちには偽りはなく、本気の恋情だ。だから、もう落合くんをこれ以上苦しめることはやめよう。楽にしてあげよう。それが私に今まで尽くしてくれた落合くんに対する、私の贖罪だ。
「ねえ、落合くん。」
「どうした、財満さん。タオルでも変える?」
「いや、そうじゃなくてね……。」私は上体を起こした。
「ちょっと言っておかなきゃいけないことがあって……。」