好きですか? いいえ・・・。
落合くんが「修学旅行」というワードを出した時、私は脱衣所でお母さんと話していた話を聞いてしまったことを謝ろうかどうか迷った。迷った結果、言わないでおくことにした。なんでも正直に話せばいいってものじゃない。話さないこともあるもんだ。そう心の中で自分に言い聞かせた。
「そっか……。まあ、いいヤツだよな。」
「そうだよね!」私は思わず上体を上げてそう言った。
「カッコイイし、優しそうだし。」
そこまで言って何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。私は落合くんが私のことを好きだってことを知っている。知っているからわかるんだ。落合くんがそれを聞いてどう感じるか。
悲しいに決まってる。もし、私が川上くんで、落合くんが私なら、きっとそうだから。
でも、落合くんは強かった。前向きだった。私に、こんな言葉をかけてくれた。
「なら、振り向いてもらえるように頑張らないとな! あ! いや、財満さんなら大丈夫だよ! 結構可愛いし、優しいしさ! 川上も外面より内面を見て人を好きになるタイプだと思うからさ!」
笑顔で。この笑顔。好きだったはずなのに、この笑顔を見ていたらこっちまで笑顔が移っていたのに、今はその笑顔が私の心を針のような尖ったもので鋭く刺してきて、痛い。