好きですか? いいえ・・・。
「歩けないからなんだよ? 歩けないから恋愛もできないとか思ってんの? そんなわけないじゃん! 歩けても気の毒な女なんか世の中いっぱいいるんだよ。顔のパーツやら体型やらに恵まれなくてさ。財満さんは、顔のパーツにも体型にも恵まれてんじゃん!」
「そんなことないよ? 私、誰かを好きになったことはあっても、いつも片想いだし、告白されたこともないし、ブスだし、デブ……ではないけど、スレンダーでもないし……。」
「自分ではそう言うよ。ナルシスト以外はさ。でも、財満さん知ってる? 自分の顔は、自分だけが見えないんだよ。鏡で見ても、左右反転してるからね。だから、主観で決めちゃダメなんだよ。客観的な意見を聞いて、『ああ、そうかもしれない。』って自信を持たなきゃ!」
そういうものなのかもしれない。でも、それができたら苦労しない。私は歩けないことをハンディーキャップだと思っている。コンプレックスにも思っている。こればかりはどうしようもないし、カバーできるような特技もない。
特技……かあ……。
「ねえ、落合くん。川上くんってテイラーが好きって知ってた?」
「テイラーってあれか? ブロンドの綺麗なシンガーソングライターの。」
「そう、あのテイラー。落合くんと初めて会った放課後にね、スナノのライブがあって、その最後のMCで川上くんが言ってたの。」
「へえー、川上にしては意外かも。それで、そのことが川上をゲットする作戦に何か意味あるの?」
「私、考えたんだよね……。川上くんが好きなものになりたいって。」
「それってテイラーになるってこと?」
初めは私もそう思っていた。テイラーになりたい。テイラーになれば、きっと川上くんは私のことを好きになってくれる。でも、それじゃ意味がないこともわかった。テイラーはテイラーで、私じゃない。
私は私を好きになってもらいたいんだ。