好きですか? いいえ・・・。
「財満さん、起きて! ギターのレッスン始めるよ!」
朝になって、落合くんの一言で、私はあの夜の出来事が、なんだか、夢のような気がした。でも、夢か現実かの区別くらいはバカでもつく。
私は寝起き悪そうに不機嫌を装って起きて、それから車椅子に乗って顔を洗って、歯を磨いた。お母さんはもう仕事に出ていて、テーブルの上に2000円と書置きがあった。
「お昼ごはんです。落合くんと分け分けして、レンジでチンして食べてね! 母より。」
落合くんがリビングに入って来て、書置きと2000円とを見比べた。
「これってさー、2000円をレンジでチンして食べろってことかな? それとも2000円で買ってきたコンビニ弁当をレンジでチンして食べろってことかな?」
「後者に決まってんでしょ?」
「やっぱそうだよなー、それしか考えられないよな。」
そう言って、落合くんは私の部屋に戻って行った。落合くんの言葉がどこか他所他所しくて、ますます夢じゃないことを空気感で教えられる。