好きですか? いいえ・・・。





渋々、私は教科書を開いて、数学の問題を解くことにした。山辺先生は保健室の法律だ。何人たりとも逆らうことはできない。



山辺先生が右と言えば、右。左と言えば、左。つまり、保健室の敷居を1歩でも跨げば、私たちは手のひらの上で転がされているのだ。



一度、事故をしてすぐのこと。教頭先生が保健室に来たことがある。頭が痛いらしくて、「頭痛薬をくれませんか?」と言った。



すると山辺先生は、薄笑いで、



「大丈夫ですよ、教頭先生。気のせいです。放っておけばすぐに治りますよ。」



と言って、私を驚かせた。教頭先生も苦笑いで、「いやあ、山辺先生には敵わないな……。」と言ってとぼとぼと帰って行った。



そんな山辺先生の冷たい視線を感じながら、数学の問題をルーズリーフに解いていく。でも、これが保健室じゃなくて、教室だったらきっと私は、この真っ白なルーズリーフに「太陽は動かない」の歌詞を考えていたと思う。



教室にさえいれば……。




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