好きですか? いいえ・・・。





「あの、山辺先生……。」



「んー? どうしたの、十志子ちゃん。」



「……私、教室に戻れますかね?」



山辺先生は少し表情を曇らせた。



「うーん……。気持ちはわかるけど、ちょっと難しいかな……。」



「難しい……ですか?」



「3年生の教室は、3階にあるでしょう? エレベーターなんてものはないし、車椅子を使って階段を上り下りするのは大変だと思うの。まあ、十志子ちゃんが戻りたいって思えるようになったのは、いいことだと思うけど……。」



いいことなのに、それをできないのはつらい。例えば、ボランティア。歩けなくなるまではやりたいなんて思いもしなかったけど、いざ歩けなくなると、無性にやりたくなる。



きっと私が事故に遭ったのは、そういう気持ちを思い出させるための、神様からのメッセージだったんだろうと思う。そうでも思わないとやってられない。



「そんなこと、大丈夫ですよ。山辺先生。」



私の話を聞いてたのか、再び落合くんのベッドのカーテンがシャーッと開いた。




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