好きですか? いいえ・・・。
「オレが車椅子ごと財満さんのこと担ぎますよ。」
なんて無茶なことを言うんだろう、落合くん。私一人抱えるだけでも大変なのに、その上車椅子まで……。
「そこまでしなくていいよ。ただ、教室に戻れればいいなって思っただけで、本当に戻ろうって思ってないから……。」
「財満さんは、戻りたいんだろ? あの教室に。」
「戻れればいいなってだけ。」
「じゃあ、オレが力貸すよ。こう見えて、結構、力あるんだから、オレ。」
そう言って、袖をまくって力こぶを見せる落合くん。その力こぶが少しだけぷっくりと出ている。少しだけ。とても頼れるような力こぶじゃない。下手したら、女子柔道部の人と腕相撲をして負けるんじゃないかと思うくらい、貧相な力こぶだった。
「いや、本当に大丈夫だから……。」
「いや、本当に大丈夫だって!」
同じ言葉なのに、ここまでトーンが違うことがあるんだなって思う。