好きですか? いいえ・・・。





「オレが車椅子ごと財満さんのこと担ぎますよ。」



なんて無茶なことを言うんだろう、落合くん。私一人抱えるだけでも大変なのに、その上車椅子まで……。



「そこまでしなくていいよ。ただ、教室に戻れればいいなって思っただけで、本当に戻ろうって思ってないから……。」



「財満さんは、戻りたいんだろ? あの教室に。」



「戻れればいいなってだけ。」



「じゃあ、オレが力貸すよ。こう見えて、結構、力あるんだから、オレ。」



そう言って、袖をまくって力こぶを見せる落合くん。その力こぶが少しだけぷっくりと出ている。少しだけ。とても頼れるような力こぶじゃない。下手したら、女子柔道部の人と腕相撲をして負けるんじゃないかと思うくらい、貧相な力こぶだった。



「いや、本当に大丈夫だから……。」



「いや、本当に大丈夫だって!」



同じ言葉なのに、ここまでトーンが違うことがあるんだなって思う。




< 162 / 204 >

この作品をシェア

pagetop