好きですか? いいえ・・・。





私は呆気に取られて、何も言えなかった。



「……違った?」



「へ?」



「オレ、超能力使えるんだ。1日に1回しか使えないんだけどさ。次の角、右で合ってるよな?」



私はなんだかおかしくなって、声を上げて笑ってしまった。



「違うー! 左!」



なんていい人なんだろう、落合くん。私が気を遣っているのを察して、そんな嘘までついて、しかも私を笑わせてくれた。思えば、車椅子になってからまだ一度もこんなに大声を上げて笑ったことはなかった。落合くんの説得によって、岸から手を振っていた笑顔が戻って来た瞬間だった。



「なんだよー、ハズレか……。左でいいのな?」



「うん。左。」



車椅子が左へと曲がる。



「でもさー、次は絶対当てるから! 見てろよ!」



「でもさー、その超能力って1日に1回しか使えないんじゃなかったの?」



「大丈夫。まだ昨日の分が残ってるから。」



車椅子は進む。新たな景色、新たな海岸へと向かって進む。落合くんとならきっとこの荒波を渡り切れる。こうやって笑顔で。




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