好きですか? いいえ・・・。
「そりゃ十志子ちゃんだって、授業をサボりに来るようなヤツがまさか大学受験するなんて訊いたら、そんな反応にもなるわよね。」
「……返す言葉が見つからねえ……。財満さん、助けて!」
「ごめん。救えないわ……。」
落合くんがパイナップルを両手で掻きむしった。そんな姿を見ながら、ふと私はあることを思った。
「そうだ! 私をこれから毎日送り迎えしてくれる代わりに、勉強見てあげよっか?」
「マジで!?」落合くんが急に立ち上がって、パイプ椅子が倒れた。
「ホントにいいの?」
「いいよ。送り迎えしてくれてるし、何だか悪いなって思ってたから、ちょうどいいかなって。」
誰かにここまで親切にされると、逆にこの親切を親切で返したいって思うのは、当たり前のことだと思う。
「でも、頭いいわけじゃないから、一緒に頑張るって感じだけど……それでもいい?」
「いいよ! いい! なんでもいい! ああ、神様、仏様、財満様!」
落合くんはわざとらしく私の両手を握って、祈りのポーズをした。男の子の手に触れたことは今までに一度もなかったことに気づいて、ちょっとドキッとした。