好きですか? いいえ・・・。
車椅子を押す感じも、いつもよりぎこちないような気がする。ただでさえ少なく、私が漕いでも交わせるような段差をかれこれ5回はぶつけている。その度に、私のお尻が3センチくらい浮いて、重力に従ってドスンッと落ちて衝撃を受ける。
「なんの嫌がらせですか?」
「いや、おかしいな……いつもはこんなじゃないのに……。この車椅子の車輪、壊れちゃってんじゃないの?」
むっ! 失礼な。壊れているのはあんたの方だろう。
でも、このままの感じで行くと、学食に着く頃には、私の身体が壊れている可能性も否めない。ここは冷静に、言い聞かせるしかない。
「大丈夫だよ、落合くん。平然としてれば。」
「平然って何? 何をどうすれば平然になるの?」
「うーん……あっ! ギター弾くときの感じ。落合くんが普段ギターを練習してる感じで行けばいいんだよ!」
落合くんがギターを弾いている姿、見たことないけど。
「なるほどな……よし、いっちょやってみっか!」
そう言ったと思うと、車椅子が蛇行走行を開始した。慌てて後ろを振り返ると、落合くんが目を閉じて、肩を揺らしていた。
「おちっ、落合くん! ひどくなってる! ひどくなってる!」
「でも、平然にはなったと思う。」
「いや、逆に私の平然さが無くなったから! スリル満点だから!」
「ジェットコースターみたいで楽しくない?」
「楽しくない!!」