好きですか? いいえ・・・。
落合くんの家は、豪邸。
……豪邸であった。
なんか新宿御苑公園でしか見たことがない、花が絡みつくようにして咲いているゲートをくぐって、大きな両開きの扉がドーンッ。その扉を開けると、私の部屋くらい大きな玄関があって、高そうな壺とかが置かれている。
「とりあえず、ここで待っててくれる? 速攻で荷物積み込むから。」
そう言って、落合くんは靴を乱暴に脱ぎ散らかして、階段をタタタタタッと上がって行った。
知らない家の広い広い玄関に独りぼっち。何この状況。
廊下も長い。照明はアンティーク調。お香の香りが開けっ放しの扉から吹いてくる風に混ざって漂ってくる。
落ち着くようで、落ち着かない。
思わず、下駄箱らしきところに置かれた鏡で自分の顔を見た。髪の毛が少し乱れていて、手グシで整えた。きっと落合くんが猛スピードで車椅子を押したからだと思う。
普通、車椅子の人には気を払うものだと思うけど、落合くんはそういうのがないらしい。そりゃ最初のうちは気を遣ってくれてたけど、自分のこととなると、周りが一気に見えなくなる。そういう人なんだと思う。
いい人だし、それはそれで普通の人と同じように接してくれてるってことなんだろうけど。