好きですか? いいえ・・・。
車椅子は風のように進んだ。周りの目がすごく怪訝そう。そりゃそうだろうなって思う。車椅子を猛スピードで押してる人、押されてすごく楽しそうにしている人を見たことなんてないだろうし、この先もきっと見ることはないんだろうなと思う。
「みんな、すっごく見てるね。」
「周りの目なんか気にするな。」
「気にしてないけど、なんて言うのかな……優越感に似た感じ。」
「財満さん、優越感って意味わかってんの?」
「財満さん、優越感って意味わかんない。」
何となくしかわかんない。でも、今のこの気持ちを表すのに一番適した言葉は、「優越感」だと思う。ボキャブラリーがない割には、なかなかいい表現じゃないかな。
「ねえ、落合くん。」
「んー?」
「もし落合くんが私みたいに歩けなくなったら、音楽やめる?」
「やめない。」即答だった。
「ってか、やめられないだろうな。それぐらい好きだもん、音楽。」
落合くんに愛されている音楽って幸せだなって思った。「それぐらい好きだもん。」って大好きな人に言われたらどんなに嬉しいだろうか。私ならきっとキュン死にしてしまう。