好きですか? いいえ・・・。
「それじゃあ、先生、職員会議の時間だから。もうすぐお母さんが迎えに来てくれると思うから、気を付けて帰るのよ?」
もう返事をしたくもなかった。私は軽く頷いて、スタスタスタと自分の脚で歩いていく山辺先生の後ろ姿を睨み付けた。
歩くヤツが……憎い……。
歩くヤツが……憎い……。
なんで2回思ったんだろう。まあいい。2度あることは3度あるで。
歩くヤツが……憎い……。
歩けるくせに、走れるくせに、「しんどい。」なんて言うヤツが……憎い!
憎い、憎い、憎い、憎い……。虚しい。寂しい。悲しい。
こんなことなら、あの時、死んでしまえばよかった……。どうして死ねなかったんだろう。どうして神様は私を殺してくださらなかったんだろう。
この世でつらいことは、死ねないこと。
涙が頬を伝って、ポタポタと足元に落ちた。スカートのポケットからハンカチを出して、拭こうと前のめりになったら、そのまま車椅子から転げ落ちてしまった。
「ふっ……ふふっ……。」
情けなくて笑ってしまった。ハンカチを握りしめた右拳で床を思いっきり殴った。手の甲の皮が破れて、血が滲んだ。