好きですか? いいえ・・・。
「あ! 忘れてた!」急にお母さんが天井を見上げながら声を上げた。これはお母さんの癖だ。
「車の中に発泡スチロールの箱があるのよ。十志子、悪いけど取って来てくれない?」
「はあ? なんで私が……。」
「だって、お母さん、手離せないんだもーん。」
そう言って、右手にネギ。左手に白菜を持ったお母さんが言った。
「それ離せばいいんじゃないかな?」
「離せないから言ってるんじゃない。」
「じゃあ、100歩譲って、それを離せないとしましょう。ただそれを車椅子の私に頼むかね、普通。」
「あら、十志子ちゃん。普段から『身体障碍者扱いしないで!』ってあれほど言ってるくせに、都合の良い時だけ、そうやって甘えるのね。」
……ムカつくけど、正論だ。
ギターケースにアコースティックギターを仕舞いながら、私たちのやりとりを聞いていた落合くんが口を開いた。
「あの、お母様。」
「まあ、『お母様』だなんて。」頬を染めるな、おばさん。
「何かしら?」
「代わりに僕が取って来ましょうか?」
「あら、ホント? じゃあ、お願いしちゃおうかしら。」
こうなると、私も行かないわけにはいかない。