好きですか? いいえ・・・。
「んじゃ、弾いてみる?」
「へっ?」
落合くんにアコースティックギターを急に渡され、私はおぼつかない手つきでそれを受け取った。抱えた。まるで、初めて赤ちゃんを抱っこしたママのように。
「ど、どうすればいいの?」
「構えて、それから適当に弾いて音出してみればいいんだよ。」
「構えてって言っても……。」
私は言われた通り構えてみた。ギターが車椅子の横の手すりに乗って、ちょうどいい感じの高さになる。
「ほおー。そうやって構えるんだ……。」
「え? 違った!?」
「いや、違わないけど、カート・コバーンみたいだな。」
「カート・コバーン?」
「ニルヴァーナ。」
「ニルヴァーナ?」
横文字が多くて、よくわからない。何の話をしているのか。構え方の名前なのか、人の名前なのか、それともバンドの名前なのか、他の何かしらの専門用語なのか。
「とにかく、右手で適当に弦を押さえて、弾いてみな?」
適当に……かあ。
「わかった。適当にやってみる。どうなるか知らないよ?」
私は人差し指と中指で2つの弦を思いっきり押さえて、ピックを受け取り、一つ大きな深呼吸をした。