好きですか? いいえ・・・。





オレ、あの修学旅行の時の恩を返したいってずっと思ってたんです。でも、オレには何もできないって……。だって、オレ、歩けなくなったことないし、歩けない人の気持ちもわからないし……。



でも、財満さんが音楽が好きだってことに気づいて、それでもしかしたら音楽で財満さんを救えるんじゃないかって。それで1ヶ月前に軽音部に入ったんです。



3年生で部活に入る人なんていないし、バンドを組もうにも誰もメンバーがいなくて、それにオレ、初心者だから、とにかくギターの練習をがむしゃらにやってました。



指の腹が裂けて、それで保健室に行ったら、財満さんがいて、それからこうして話すようになったんです。



つまり、財満さんが歩けなくなったからオレは今、こうして好きな人といられるんです。



でも、それだとなんか財満さんが歩けなくなって良かったって気がしてきて……そんなわけないのに。



だから、オレが財満さんのことを気に掛けるのは、親切心からじゃないんです。自分の私利私欲のためなんです。



そんなオレが財満さんのことを笑顔にさせるなんて、そんなことできないんじゃないかって。でも、財満さんは明るいから。歩けなくなったのに、笑顔だから……。



時々、そんな財満さんの笑顔を見ていると、胸が苦しくなる時があるんです。



千代……いや、お母さん。オレ、もうどうしたらいいのかわかんなくて……。」




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