私の正体、バレてたまるものですか
「カット!」

監督の声で我に返る。
子役を見てぼーっとしてしまっていた。

すると、ある男の子と目があった。
見るところ、ここの学校の生徒のようだ。

(あれって、確かここの制服…。あの子、朝早いんだな。まだ七時なのに。)

撮影で使われている学校は貸し切りではない。
この時間だとここの学校の生徒もまだ全然おらず、広々使えるが、生徒が登校しだしてくると、もちろん”撮影”という言葉に反応してあっという間に野次馬ができることだろう。

男の子は私と目があっても、なお目を逸らさない。

(なんかずっと見られてる…。もしかして睨まれてる?)

つい目線を外す。

「栗宮さん!準備お願いしまーす!」

「あっ…。はい、今行きます!」

男の子のことは少しひっかかったが、気にしないよう、仕事に戻った。
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