私の正体、バレてたまるものですか
「5・4・3…」

スタッフさんから撮影開始の合図がだされたのを確認してから演技を始める。

コツコツコツ…

私は誰もいない廊下を一人静かに歩く。
本当のところ、他の役者やスタッフ、監督や恵美などたくさんの人がいる。
だけど、今の”私”は”私”じゃない。
いないも同然だ。

私は自分の靴箱の前で立ち止まる。
目の前には周りとは違うカラフルに彩られている。

…が、描かれているものは最悪だ。

”ブス””消えろ””死ね”

言わずともわかる〈いじめ〉だ。

主人公は親に捨てられたショックで心を閉ざしてしまい、地味で無口な少女となってしまった。
愛想のない、弱い者を集団でいじめる。

学校生活では逃げられない道だ。

「…はぁ。しょうもない。ガキかっつうの。」

ポツリとセリフに書かれていた通りのセリフを呟く。

上靴を見ると数個の画鋲。
それを手に取り床に投げ捨てる。
そして、醜い落書きを消さずに靴箱を離れる。

「画鋲が足に刺さればいいのに。」

主人公も相当歪んだ性格のようだ。

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