私の正体、バレてたまるものですか
場所が変わり、グラウンド。
撮影はまだ続いている。

「悪い!」

声のしたほうに顔を向ける。
見るといかにもモテそうな男子。
この人は共演者。主人公と恋をする役。
彼はサッカー部だ。

「そこのボール、とってくれない?」

見ると、サッカーボール。
私と彼との間にはフェンス。

(結構高いけど…。よくボール飛び越えた設定にしたね。)

私は無言でボールを手に取り、グラウンドへ入る場所からフェンスをくぐる。

「…はい。じゃ」

「あ、ねえ!君、隣のクラスの子だよね?」

「…知らない。」

そう言って逃げるように彼から遠ざかる。

(本当、愛想の悪いキャラだな…。でも…なんだか共感はできるな。なんでかな。)

主人公の気持ちには同情できた。

(…あ。)

顔を上げるとここの制服を着たさっきの男の子。
撮影が気になってグラウンドまで来たのだろうか。

(…とんだ野次馬精神だこと。)

「カット!」

監督の声に男の子から目を離し、私達役者は緊張が解けるように自分に戻る。

「はい、凛。」

スタッフにテントへ案内されると恵美に水を渡された。

「ありがとうございます。恵美さん」
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