私の正体、バレてたまるものですか
「こっちこっちー!」

喫茶店に着くと、莉子が手を降っていた。

「お疲れ〜!何食べる?甘いものいっぱいだよ〜」

疲れた体で椅子に座ると莉子からメニューを差し出された。

(結構美味しそうなのあるなー。また今度来よう。)

「じゃあ、キャラメルチョコパフェ。」

「私は白玉抹茶アイスで~!」

自分の注文をし終えたらあっという間に品が運ばれてきた。

「なんか久しぶりだね!こうやって二人でゆっくりできるの!」

嬉しそうな莉子の笑顔を見たらこっちまで嬉しくなる。

「そうだね。そっちはどう?今ドラマの撮影なんでしょ?」

「うん!そーそー!聞いてよ!!めっちゃ大変なんだよ!?撮影時間長くてさー、1日のほとんどがそのドラマの撮影…。平均睡眠時間2時間半。酷いときは仮眠1時間だけ…。」

「うわ、大変だね…。頑張って!主役でしょ?」

私もこの頃結構仕事で詰まってたけど、莉子のほうが大変そうだな…。
この業界は”高校生だから”なんて屁理屈は聞かない。
私も頑張らないと。


「うん!ありがと!でもその撮影も今週中で終わり!完結~!3ヶ月後に放送だから、見てね~!」

「うん、絶対見るよ。」

(莉子の演技はいつも惹かれるんだよな…。楽しみ。)

「蘭はもこの頃忙しそうだよね?モデルの仕事、どう?」

「うん、充実してるよ。莉子程じゃないけど、大変…。」

「そうだよね~。蘭ますます人気出ちゃって、妬けちゃうなー。」

「いやいや、莉子には負けるよ。」

「またまたぁ~!蘭と一緒に仕事できたら絶対楽しいのに!あ、でも確かドラマの仕事も入ってるんでしょ?そのまま蘭も女優になりなよー」

何回莉子にそう誘われたことか。

「私に女優は合わないって。莉子が言ってるその仕事も、プロデューサーさんの押しに負けて仕方なく引き受けただけだし…。」

私はドラマや舞台のように演技をする仕事はあまり好きじゃない。
自分にも合っていないと思う。
普段そんな仕事を受けたら断るのだが、なんにしろ私は人の頼みを断るのが苦手。
それに加え、相手はすごい勢いで頼みごとをする偉いプロデューサー。
私には到底断れなかった。

「そんなことないのになー。」

昔よりかは演技力も人様に見せられるほどになったものの、やっぱり私には向いていないと思う。

私は何回言われようと、同じ答えしか返せない。
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