心で叫ぶ、君のこと
BEFORE
ジリリリリリ…




ジリリリリリ…



ジリリ……リリ……リリ……リ……。









…うおおおあうっ!意識遠のけてる場合じゃない!



ほら、起き上がりなさい!




ペチッペチッ。




容赦なくほっぺをビンタしまくったら目が冴えわたってきた。


いや、めっちゃ痛いけどね。




すぅーー、




「おっはよーーーーーぅ!」



はい、喉の奥底まで目覚めました。




これ、毎朝のルーティーンってやつ。



これしないと目が覚めなすぎて軽く5度寝しちゃうから。




え?朝っぱらから絶叫して近所迷惑?



全然全然、ノー問題。




家族はこんなん日課だからあたしの大声なんぞ気にもとめないし、近所っていったって家の周り1軒しかないし。





その1軒っていうのもね…




ってちょっと待った、こんなことしてる時間などあたしには残されていないのだ!



着替え着替え着替え!


顔顔顔!


髪の毛髪の毛髪の毛!


食パン食パン食パン!


歯磨き歯磨き歯磨き!


課題……



はもういっか。




鏡の前で乱れチェックして、

完了ーー!




いや、一応いつも通り急いでみたけどちょっと今日余裕すぎない?
だってたぶんまだ7時すぎくらい…








!?!?!?






え、なに、何が起こった?!


見間違い?



短い針、8指してない?



そんでもって長い針、3指してない?






え、つまり、8時15分なうってこと?






、、
、、、。





「ギャーーーーーーーッ!!!」




ただいま、脳内BGMが子守唄みたいな優雅な音楽から戦闘会場に流れるような勇ましいメロディーに切り替わりました!





戦闘会場に流れるような勇ましいメロディーとはなんなのかって、あたしもよくわかんないけど、今はっ、説明してる暇などっないっ!






遅刻ちこくチコク!!




ぜっったいあたし目覚まし1時間遅くかけたんだ。


やってしまったっ!


ただいまの時刻が発覚してからここまでの時間、10秒。




華麗なるフォームで部屋を飛び出し、


全力疾走で玄関をぶち破り
(あたしのせっぱつまった脳みそがそう思い込んだ。)、

無我夢中で手足を振りまくり、気づいたら校門の下に。




時計見てる暇すらない!

とにかく急げ!




閉まりかかったドアをこじ開け、




研ぎ澄まされた無駄のない動作で靴を脱ぎ、




履き、






ラストスパートをかけまくって廊下を突進していく。








来たァー1の3!!







ガラガラッ。

キーンコーンカーンコーン。




「おおおおおー!」




突然飛び込んだあたしにビックリしてたクラスメイト一同、拍手喝采。




いよっしゃああああ間に合ったああああ!







しかも教室入った瞬間チャイムが鳴るっていう奇跡。




「おはよ。すごすぎ。」


「萌黄最強説、更新されたわ。」


「今日も間に合ってよかったね。」



みんなあたしの肩をぽんぽん叩きながら口々に感想を述べてく。




「いやぁ、これもまあ、才能ってやつですかね?もっと褒めて褒めて。」






ピシッ。

「痛っ。」



振り向くと、




「お前また寝坊?いい加減にしろよな、こりない奴め。」




「だーー昴っ。あのねあんたね、置いてくならせめて起こしに寄ってからくらいしてくれる?隣住んでるんだしそれくらい余裕っしょ!」



「ムリだな。いくら叩いても蹴っても起きないじゃねーか。ムダなことはしないって決めてるもんで。」



「そこを、起こすのが、あんたの、役目なの!」



「んなわけ。高校生が人に起こしてもらうとか恥ずかしくねーの?」



「恥ずかしくないね!こーやって毎朝滑り込みセーフしてるほうが恥ずかしい!」



「それも自分の責任だろ?じゃ一人で起きて余裕で間に合う努力をしろよ。」



「だっからそれが無理だから起こせって言ってんでしょ!?」








「…あのお二人さん?」




「なに海央だまってて、今なんとしてもこいつに起こしてもらう約束を…」

「城田、真野。」




ぎくっ…。



この凄みのきいた低音ボイスは、、




「おまえら、チャイムとっくに鳴ったっつうになにギャンギャン言い合ってる!?さっさと座れ!!」







うへーー先生叫ばないで、怖いっすうるさいっす耳壊れるっす!







って、いつの間に周りのみんな座ってんじゃん、、。早く教えてよ、先生来てんの気づかなかったし。






「すんませーーん。」




痛っ。

あたしを膝蹴りしてから席につくなー!




「痛いわバカ!」



「は?なにお前の膝だったの?茶色すぎて床と同化してたわ。」



「…!?!?」





もう言葉も出ない、!


日焼けしてんの気にしてるんだから!



いやみんなクスクス笑わないで?


なに、また始まったよ夫婦漫才みたいな?




「よっおしどり夫婦!」



「ナイスカッポーー!!」



合いの手いらんわ。



ていうかナイスカッポーは違うけどまだいいとしておしどりってなに?



にわとりの仲間みたいな?






え、それあたしと昴が鳥ってこと?


失礼しちゃう、どこが鳥よ?






「真野聞こえないのか?早く席つけ!」




やばいまだ教卓の真ん前につっ立ったまんまだった。




「あ、すいませんすいません。」




えへへへ。これでもランニングホームランした後なんですよぉ。



「ったく。城田と真野はクラス変えた方がよかったか。」






「先生だめですよー。そんなことしたら萌黄ちゃんが泣いちゃいますぅー。」



「すばるぅ、あたしのそばにいてぇ〜って!」



「昴も学校来なくなっちゃうかも!」



「くそっ…萌黄のいない教室なんてただの箱だ…!って!」



「それに俺らだってこの学校のおしどり夫婦を側で見れなくなるなんて悲しいですもん!」







……いや君たちね。


なにその豊かな想像力。


あたしたちは見世物じゃないの!



ってかまたにわとりとか言わないでよ、せめて人間ってこと認めてくれます?



「そ、そうなのかおまえら…?」





いやいやいや!

先生!

そこ!

今さら驚くとこじゃない!

今に始まったことじゃない!





「違いますっ。みんなが勝手にいじってるだけなんですっ。気にしないでください。」




ね、すば……



「ね、寝るなー!!」



なんでこんな時に夢の世界へ旅立てるのよ!?




「「おおおお!萌黄選手の愛のある鋭いツッコミ、入りました!」」




「「それを受けた昴選手、いまだ眠りから覚めず!うーーん、愛があと少し足りないのか!?」」





…助けてください、先生。



あなたは知らないかもしれないですけど、毎日毎日毎授業こんなことが繰り広げられていますからね?




なんなのよなんなのよ!



あんたさぁ、あたしを見捨ててないで起きなさいよ!



それからほらほら皆の衆、前を向けぃ!




先生早くホームルーム初めて!



まじまじとあたしと昴を見つめないで!





あたしの声にならない叫びは、本日二度目のチャイムとともに心の奥に響き渡ったのでした…。





ん?



2度目?




いや、おい!

ホームルーム終わっちゃったじゃぁん。




「おっ?昴選手、終了のチャイムを耳にした途端、人が変わったように顔を輝かせて廊下に飛び出していきました!」




え?なんだって??



ほんとだ昴のやつ、跡形もなく消え去ってる。


その後を自称実況・解説の男子数名が追いかけてく。





はぁ。ほんとやんなっちゃうよ。







「もーえー♪」



むむっ。



この激しく能天気でありながら意地の悪い複雑な声は!




「今日もラブラブねぇ朝からっ。憧れちゃうわ〜。」




全然憧れてませんよね海央さん。



はいはい今日もあたしをからかい倒すんですか。



はいはい大丈夫ですよ全く気にしてませんから。


はいはい。




「ねえねえぶっちゃけ、やっぱ付き合ってんの?」



「え、そうじゃないの〜?」



「どうなの??」

うっわーなんかめっちゃ女子群がってきたぁー!



どーせ海央が招集したんだろうけど。
恐ろしい行動力。



「付き合ってないですー。」


「ええまじ?そーなの?」



「うっそだぁ。」



「いやいやぁ、そんな、 …恥ずかしくて言えない…好きなんて…なんていうことでもないからね?」



「素直になんなさいよ!ほぉら白状しなさい!」



なにそのかもし出てるラスボス・海央感、、。



「白状することなんかないんだってば!」



「でもあたし、昴くんと萌黄ちゃんお似合いだと思うよ?」



「あたしもー。お互い通じ合ってる感がいいよね。」



「わかる!萌黄のことならなんでも知ってるみたいな!」



「うわ〜やばい!それでフォーリンラブでしょ、フォーリンラブ!」



「それ、それ!最高じゃん!」




ガールズトーク始まったんですけど…。



フォーリンラブって意味はわかんないけど、なんかだいぶ妄想が行き過ぎてる気がする。




「まあ大丈夫、あたしもえと昴くんが相思相愛ってこと知ってるから。」




「なにが大丈夫なのかわかんないんですけど。」



「そうそう。安心して。誰も昴くん取らないから。イケメンだけど、もったいないけど。」



「いっや、別にそんなこと…!」



な、なんかガールズ、ニタニタして席戻っちゃった。



何なんだあの、何でもお見通しみたいは目は。




あーー、誰かわかってくれないかなーー!


この複雑な気持ち。





おっと授業始まっちゃう。
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