つぎの春には…
来週から忙しくなる
帰りは深夜になるだろう…帰れない日もありそうだ
その前に彼女に会いたい
昼休みに休憩所でタバコを吸いながら、彼女へのメールを作る
『お疲れ様です。今週空いてる日ありませんか?』
送信ボタンを押す前に何度も読み返す
念入りにチェックしなきゃいけないような内容じゃないのに…
深呼吸をして、送信ボタンを押す
……乙女かっ
「乙女かっ」
心のツッコミが隣から聞こえた…
バッと顔を上げると、いつの間にか隣に座り、タバコに火をつけていた中谷がいた
見られた…
「兼~珍しいねぇ~俺の存在にも気付かないほどメールに集中しちゃって」
ニヤニヤと俺の顔を覗き込む
杏といいこいつといい何でこんなやつばっかなんだ
「別に…」
そう口にしてポケットに携帯をしまう
「隠しても無駄だよ~?いつもはポーカーフェイスな兼のお顔が緩んじゃってるから」
そう言ってタバコをくわえる
俺としたことが…顔に出てるとは…
こいつなら喋ってもいいか…
「この前のお前に連れて行かれた街コン…」
「あぁあれね~俺、由美ちゃんとこの間、飯行った」
由美ちゃん?どいつだ…
蓮池さん以外全く記憶にない
「由美ちゃんってどいつだ?って顔してるぞ。で、お前はどの子と連絡とってるの?」
中谷が先を促す
「あぁ、終了間際に挨拶だけした2人の髪の長い方」
あの時のことを思い出しながら説明する
蓮池さんと一緒に来ていたのはショートカットがよく似合う小柄な人だった…と思う
「あぁ、由美ちゃんと一緒に来てた栞さんね」
え…
「由美ちゃんて…」
「うんうん、栞さんと一緒に来てたショートカットが似合う可愛い女の子」
待て待て
そこじゃない!
「いつの間に連絡先交換したわけ?」
あの時は席ついてすぐに解散になったはずだ
「いつって…店出る直前。お前先に出ちゃってたじゃん」
おいおい…俺も仲間に入れてくれよ…
「で?兼はどうやって栞さんと連絡とったわけ?」
ショックを受けているところへ投げかけられる質問
「営業中に寄った銀行で…たまたまいて…」