つぎの春には…


「ふぅん、仕事中にナンパしちゃったんだ?」


ニヤニヤとタバコを灰皿へ入れる




「お前が連絡先教えてくれてれば良かったんだろ?」


そう言って顔を背ける



「俺、兼が栞さんに興味あるなんて知らなかったしぃ?」


そう言って立ち上がる中谷の後に続き休憩所を出る




「まぁ、連絡とれて良かったじゃん」




そう言って営業部の扉を開け、自分のデスクに戻っていく中谷




俺もデスクに戻る




携帯をチラッと見たが、彼女からの返信は来ていなかった



銀行の休憩は交代制だと言っていたから、時間が合わなかったのだろう






午後6時30分を過ぎ、今日の仕事は大体片付いたので、帰り支度をしながらポケットの中の携帯を取り出す




メールが1件





彼女からかもしれない





慌ててメールを開く




『お疲れ様です。今週は本日の19時以降なら空いています。急で申し訳ないのですが、今週は他に時間がなくて…』




今日…




19時?




今が…




18時45分…




急げっ俺!



荷物をまとめたカバンを持ち、慌てて部署を出る




エレベーターに乗る前に休憩所に目をやると、ニヤニヤと笑みを浮かべた中谷が手を振っていた


中谷のそばに先日、俺に告白してきた女がいたが…今は気にしていられない





エレベーター内で彼女の番号を携帯に表示させる



エレベーターを飛び出し早足で歩きながら電話を発信する。



プルルルル…







「はい、蓮池です」




5コールくらいで彼女が出た




「兼元です。すいません、遅くなりまして…今日、まだ空いてますか?」



T駅方面へ歩を進めながら問う




「はい」




「じゃあ、この前のカフェの隣の居酒屋でどうでしょう?」




デートに誘っておいて居酒屋とか色気もないが…


とにかく蓮池さんの時間を確保だ






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