つぎの春には…


その週はずっと彼女に告白したことが気になっていた





彼女はどう答えを出すのか…







翌週に入ると人事が発表され、前に部長に言われていたでかい案件が動き出した





でかい割に期間が短く、かなりの多忙を極め、彼女に連絡なんてできる状況ではなかった






俺が主任となり、1週間程が過ぎた



定時を迎えたが今日もまだまだ帰れそうにない




休憩所で一服…




こうゆう時に思い出すのは



彼女の笑顔…



ではなく、最後に見た、驚きと戸惑いの表情…






俺に望みはないのだろうか




「なに時化たツラしてんだよ」




中谷が自販機で買った缶コーヒーのプルタブを上げながら隣へ座る



砂糖とミルクたっぷりのやつ



相変わらず甘党だな…





「忙しいなぁって…」





考えてたことは違ったがまぁ、それも間違いじゃないから適当に誤魔化す






「まぁなぁ…で?」




で?って…やっぱバレてんのね




こいつと杏にはどうやら隠し事はできないらしい…





「前にここで蓮池さんにメール送ってた日…」






逃れられそうにないので、あの日のことを簡単に説明した



「やっぱり告白すんの早まったかなぁ」


ガクっと効果音が付きそうに項垂れた俺



「ドンマイ」



笑いを堪えながら俺の背中を叩く中谷



面白がってやがる





「お前って仕事では器用なのに、恋愛は不器用なのな」



そう言って空になった缶をゴミ箱へ入れ休憩所から去っていった





俺だってこんなに不器用だと思わなかったよ…





今までの恋愛はそれなりに上手くやってきたと思う



今思うとどれも本気じゃなかったのか…


どれも向こうから告白されて付き合ってきた





自分から告白なんて初めてだった



そりゃ不器用になるわ




自嘲気味に笑い、休憩所を出る


今日も深夜まで残業だ












それから3週間程が過ぎた




でかい案件も佳境に入り、いよいよ来週には契約前のプレゼン







蓮池さんからの連絡はない…


忙しくて俺も連絡していなかったから、プレゼンが終わったら連絡してみよう






そういえば



蓮池さんからの連絡はないが、2日前に杏からの不在着信があった




それを今思い出したので、残業中だったが、キリのいいところで休憩所に行き、杏に電話をかける






プルルルル





「もしもーし」


1コールで出た杏



速すぎてこっちがビックリする



「一昨日の電話なんだった?ごめん、忙しくてかけ直すの忘れてた」



俺からのかけ直しの電話なんて特に気にしていなかっただろうが、一応、謝罪もする




「あぁ、一昨日ね、栞さんに偶然会ってさぁ」


と楽しそうに話し始める




蓮池さんに会っただと?



俺も会ってないのに?

< 14 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop