つぎの春には…
「お茶しながら少し話したんだよね」
お茶までしただと?
「それでさぁ、拓ちゃんとはもう上手くいってるもんだと思って、拓ちゃんとどう?って聞いちゃって、ごめんねぇ」
謝ってるテンション違うだろそれ…
「おま
「てかさぁ、拓ちゃん」
俺が抗議しようとしたのを遮り話を続ける杏
「栞さんのこと、ちゃんと全部聞いた?」
え…
「…全部?」
言ってる意味が全くわからない
「はぁー」
電話の向こうから盛大なため息が聞こえた
「ちゃんと聞かなきゃダメだよー?話はそんだけだから!じゃあね~」
プツっと通話が切れ、ツーツーという電子音が聞こえる
全部ってなんだ…?
暫く携帯を眺めていたが
ハッと我に返り仕事に戻ろうと携帯をポケットに仕舞おうとした
ブブブ…と携帯が震え始めた
杏が何か言い忘れたかと仕舞いかけた携帯の画面を見ると
『蓮池栞』の文字
「もしもし?」
恐る恐る電話に話しかける
「蓮池です」
久しぶりに聞く彼女の声
やっぱり好きだ
「あの、来週の金曜日の夜は空いてますか?」
「ええ、もちろんです」
来週の金曜日はプレゼンで夕方には終わる
仕事もひと段落だ
「19時に前と同じ居酒屋でお待ちしてます。」
それだけ言うと彼女は早々に電話を切った
避けられてる?
いや、避けてたら食事なんて行かないよな