つぎの春には…
「いつもご贔屓にしていただいてる高梨様だけ特別に出来上がりの検品後すぐに会社までお届けしているの」
なるほど、それでここにいるわけか…
「日下さんには無理言って、我が社のホームページの写真もお願いしたほどだ」
杏はスタジオの外でもズバ抜けたセンスの写真を撮ることは知っているが、高梨社長がそこまで杏の写真に惚れ込んでいるとは…
「では高梨様、私はこれで。次回は奥様との結婚記念日ですね。またご予定がお決まりになりましたら、ご連絡くださいませ。」
とびきりの営業スマイルで「失礼致します」とお辞儀をし、杏は去っていった
「さて、行こうか」
杏の背中を見送り、高梨社長の声で受付の人を先頭に会議室へ向かう
「先日、今回の件でもう1社がプレゼンに来てね、なかなかの出来でうちの担当連中の評価も高かったよ。」
エレベーターの中で高梨社長からプレッシャーの言葉
「日下さんの知り合いだからと言って、贔屓はしないよ」
うちのメンバーに再び緊張が走る
「しかし、日下さんの信頼する友人なら結果を出せると期待しているよ」
穏やかな笑顔を見せ俺を振り返る
「ありがとうございます。ご期待に添えるプレゼンを…結果をだすことをお約束致します」
このメンバーならやれる
俺は自信を持って高梨社長へ感謝を述べる
俺の言葉にメンバーの空気が緊張から自信へと変わる
そうだ。こんな時に緊張感丸出しの及び腰では決まるものも決まらない
俺が…俺と中谷が自信を持って選んだ部下達だ
臆することはない