つぎの春には…
「主任、やっぱカッコいいっすね~!」
プレゼンを終えた帰り道、別の案件の打ち合わせがある部長と別れ、駅に向けて4人歩いていた時に俺の直属の部下の木村がしみじみと言う
車は部長が乗って行ってしまったので、俺たちは直帰する事にした
俺は駅の反対側だか、あとの3人は駅から電車に乗る
プレゼンは当然うまくいった
高梨社長の最後の表情からも契約はほぼ決まっただろう
「あ、中谷主任もカッコよかったっす」
「なに?俺はついで?」
木村の肩に手を回し何か企んでいそうな笑みを浮かべる中谷
「そういえば、入った時に高梨社長と一緒にいた日下さんて兼元主任と友人と言ってましたけど、付き合ってたりするんですか?」
中谷の直属の部下・吉井が突然聞いてきた
「吉井…変な冗談はよせ。杏も言ってただろ、『信頼できる友人』って。100%ないから」
杏と付き合うとかありえないから
俺の顔は今、げんなりという表現が正しいだろう
「そうなんですか?」
まだ納得できない様子の吉井
「杏とは過去も現在も未来も友人以外ない」
きっぱりと言い切る俺
「そうそう、私と拓ちゃんがなんてあり得ないわよ~」
突然、杏の声が飛んできた。
振り向くと、今日の営業を終えたのか、閉店作業をしている杏がいた
「お疲れ様~!」
杏の声に全員が足を止める
「プレゼンうまくいったみたいね!もう誰もいないから、良かったらコーヒーでも飲んでく?インスタントだけど」
そう言って、俺たちを手招きする杏
俺たちは顔を見合わせ、フォトスタジオの中に入っていった