つぎの春には…
従業員の休憩室であろう部屋に案内され、コーヒーが順番に出てくる
かと思ったら、何故か緑茶が出てきた
杏以外の一同が頭に疑問符を浮かべている
「杏…これはどう見ても緑茶だよな?」
一応聞いてみる
「うん、コーヒーって言ったけど、コーヒーは高梨様のとこで飲んでるかと思ってお茶にしたのよ。落ち着くでしょ」
「コーヒーが良かった?」と首を傾げる杏に誰も「はい」とは言わない
杏の言う通りプレゼン中にコーヒーを2杯飲んだから緑茶がありがたい
こういう気遣いが高梨社長に気に入られてるところの1つだろう
感心しながら緑茶に口をつける
カシャ
音のした方を見ると杏が一眼レフを構え、シャッターを切っていた
「おい杏、何してる」
他の3人は唖然としている
「折角いい男が揃ってるから写真撮っておこうと思って」
「まぁ、お茶代だな」
写真を撮り出した杏は止まらないので他の3人を不快にさせない言葉で納得させる
「杏さんめちゃキレイっすよね!彼氏いるんですか?」
木村が尋ねる
こいつ狙ってんのか?
「ありがとう。彼氏はね~高梨様のとこのラグビー部の酒井大也くんよ」
ニヤっと杏が笑い、またもや唖然とする木村の顔をカメラに収める
杏の彼氏はここにいる全員…いや日本中が知ってるくらいに有名なラグビー選手だ
テレビでもニュースのスポーツコーナーとかでよく見る
俺は大学の頃からそいつのことも知ってるし、付き合い始めたのも知ってるから今更驚かないけど、俺を除く3人は唖然という言葉が良く似合う
「君、いい表情するね~」
笑いながら杏はシャッターを切っていく
「あ、俺この後約束あるから先に帰るわ。お疲れ」
蓮池さんとの約束の時間が迫っていたので、木村を犠牲に先に帰ることにする
杏に「ごちそうさま」と手を挙げ、店を出る
すっかり日も落ちて暗くなった道を駅に向かって歩く
駅までは歩いてもすぐだから、ちょうどいいくらいだろう