つぎの春には…
「「「いらっしゃいませー!」」」
店員の元気な声が響く
約束の店に着いたのは19時ジャスト
前回と同じ個室へ案内される
「すいません、お待たせしました」
ピンと背筋を伸ばし座っている彼女につい見入ってしまう
「いえ、私も今来たところですので」
少し緊張した面持ちの彼女
何かしらの答えが出たのだろう
とりあえず飲み物と肴を注文し
彼女の顔を真っ直ぐと見る
「すいません、告白しといてなかなか連絡もせず」
正確には怖くてできなかったのだがそこは伏せておく
「いえ、大きい案件で忙しくしてるって杏さんにお聞きしました」
突然の杏の名前に驚く
本当に神出鬼没なやつだ…
「杏に会ったんですか?」
「ええ、偶然ここの隣のカフェの前でお会いして、少しお話しました」
柔らかい笑顔を見せる彼女
杏には相当心を開いているようだ…
「杏と随分親しくなったみたいですね」
つい思ったことを言ってしまった
杏に嫉妬してる自分がカッコ悪い
「先日、杏から電話がきて、言われたんです。あなたのことを全部ちゃんと聞いたのかって…」
俺の言葉に彼女は目を伏せる
どうやら聞かなきゃいけないことがあるようだ
「もし、よろしければ聞かせてもらえませんか?あなたのことを…全部」
俺はできる限り優しい声音で尋ねる
彼女は恐る恐る目線を上げ、俺の目を見て頷いた