つぎの春には…
結局、彼女の名前すらわからないまま数日が経った
仕事の営業の合間に現金を引き出すために銀行へ立ち寄る
あ…
いた
ATM待ちの列の最後尾に並ぶと前でお婆さんにATMの操作を教えている彼女がいた
「蓮池さん、いつもありがとう」
用を終えたお婆さんは礼をいいATMを後にする。
「いえ、また何なりと仰ってくださいね。」
ありがとうございました
と彼女は頭を下げた。
俺は一連の綺麗な動作に見入っていた
頭を上げた彼女と目が合う…
一瞬驚いた顔をした彼女はすぐに笑顔を作り俺に軽く会釈をし、銀行の窓口の方へ踵を返した
「蓮池さん!」
慌ててATM待ちの列から飛び出し彼女を呼び止める
名前はさっきのお婆さんが呼んでくれたおかげでゲット
またまた驚いた顔で振り返る
呼び止めたものの、話すことがまとまってない
とりあえず胸ポケットから名刺入れを出し、そこから1枚抜き取り裏に個人の携帯番号を書き込み彼女に差し出す
「こないだは時間なかったから、今度ゆっくり話せない?」
彼女は少し困ったように微笑みながらそれを受け取る
ATMの最後尾に並び直し、俺らしくないことしたなと今更ながらに恥ずかしさが込み上げる