つぎの春には…
闘うということ

〜生と死の狭間で〜



旅行の翌日に出勤すると、課長から呼び出される


「着いてこい」という深刻な表情の課長の後を追い連れられた場所は社長室



ソファに課長と並んで座り、正面のソファには社長が座っている



「光から連絡がきたよ」


その言葉に心臓が反応する



目の前にいる社長は俺の主治医となる親友の遠山光の父


「一刻も早く治療を始めないと生きる可能性がどんどんなくなると言われたんだが…」



社長の言葉に猶予がないことを理解する


光が俺に直接ではなく自身の父親である社長を通して言ってくるなんて



「私も後継者がいなくなるのは困るので早急に治療をしてもらいたい」


後継者…そう言えば、大学の頃、就活中の俺に「私の後継者にならないか」って声をかけてきたな


ひとり息子の光は医者になる道を選んでいたとはいえ、本気でそう思ってくれていたなんて…






「仕事の事なら俺がフォローしとくから、お前は治療に専念して必ず戻ってこい」


社長室を出て営業部へ戻る途中で課長が言う



出社してすぐだと言うのに荷物をまとめ退社する






「ただいま」


さっき「いってきます」と出たばかりの栞のいる家に帰る


「どうしたの?」


とリビングからまだ夏季休暇中で家にいた栞が出てくる


「…話があるんだ。海斗と明はいる?」


ちゃんと話さなきゃな



栞が海斗と明をそれぞれの部屋から呼び出し、いつものダイニングテーブルに4人座る




そして全てを話す




茫然とする海斗と明


予想通りに大粒の涙を溢れさせている栞



愛する家族たちをもう守ってやれないだろう自分



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