はやく気づけ、バカ。





「おいしかったね~!」
たまごサンドとサラダを思い出してそう桐谷くんに同意を求めると、「そうですね。」と笑顔。


お店を出てから約10分、ついに会社のエントランスの目の前に着いた。
いつも通り警備員さんに挨拶をして、タイミングよくに来たエレベーターに乗り込む。


お店に向かった時とは違い、少し混雑している。エレベーターのボタンの、10階、11階、12階、15階に明かりが灯されている。
そして1分ほどすると、私たちの10階についた。


はやく1階につけ!と願っていたあの時よりも早かったような気がした。


エレベーターから桐谷くんと一緒に出た時、ぼそりと何かが聞こえた気がした。

「――――――」

「?何か言った?桐谷くん。」
振り返り尋ねると、桐谷くんがいつもよりも大人っぽく見えた。

「何も言ってませんよ?」

(気のせいか...)


__この時、桐谷君がなんて言ったのかをちゃんと聞いていたら、
もう少し早く、気づいたのかもしれない。


「真島さんには、負けませんよ?先輩。」


本当の桐谷くんに。




< 117 / 139 >

この作品をシェア

pagetop