はやく気づけ、バカ。



「.........か。」

「どうしたんですか?」

「あ、いえ。...それで、明日はどうですか?お暇ですか?」

(なんて言ってたんだろう。)
と、彼が何を言ったのかは気になるが、今はそれどころではない。


「...あいて、マス。」


正直、先日のエレベーターの件、それに通勤の際に避け続けた件の罪悪感から私は逃げ切ることができなかった。

それでも出来れば一緒にいたくはない、という思いから語尾が片言になってしまう。体は正直だ。


そんな私の思いに気づいているのか気づいていないのか。
真島さんは「じゃあ...」と話を切り出した。

そして回想シーンから現在へと戻り...。


「甘利さん。突然で申し訳ないんですが、チケット余ってるので一緒に映画でもいきませんか?」


「......(どうしよう)」
もう、逃げられない。と思った瞬間だった。

(...わたし、女性社員全員を敵に回すかもしれない。)




こうして、

真島さんは無事、映画鑑賞に私を招待することができたのだった。






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