はやく気づけ、バカ。






「はぁ~、今日も一日、がんばろう!」

そう自分を鼓舞し、エントランスに立っている警備員さんに「おはようございます。」と声をかけ、エレベーターの列へ並ぶ。

ピーン、と運よくエレベーターが一階につき、次々と人がのっていく。

(これは...乗れないかも。)


諦めよう、と思ったが一番手前に乗っている男性が


「乗ったらどうですか?」と私に声をかけたようだったので、

「す、すみません...」

と、縮こまるように、ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターに乗り込んだ。


私が本当にぎりぎりの最後だったらしく、なんだか他の乗っている人に申し訳なくなる。


エレベーターのボタンは10階と11階、12階だけが押されており、

10階は私が降りる階で、それは10階まではずっとこの状況だ、ということを表していた。


エレベーターが7階を過ぎたあたりで、

(私に声をかけてくれたさっきの男の人にも当たってるし...申し訳ないな。)


と思い、ちょうど向かい合わせになっていた男性の顔を見つめ、

「すみません、当たってて。」

と告げると、その男性は少し驚いたような顔で、


「...気にしなくて大丈夫ですよ。」

といった。

(...そうじゃなくて、こっちが気にしますよ...)

なぜなら、この目の前の向かい合わせになっている男性、かなりのイケメン。

(普通のイケメン、って、髪の毛でごまかしてたり、

鼻が残念だけど目が綺麗に整っていて誤魔化せる、

っていうような人とか、単純に雰囲気とかだったりするんだけど...)


ーーこの人は単純に顔がものすごく綺麗。まさしく真のイケメンって、感じ。

と、中々に生意気なこと考えていると、


ピーン

と、エレベーターが10階に着いたことを知らせた。


ドアが開き、スペースに余裕ができたところで最後にもう一度、

「すみません、ありがとうございました。」とイケメンに告げ、

ぎゅうぎゅう詰めだったエレベーターを離れた。




「よし、今日も一日がんばろう。」

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