はやく気づけ、バカ。
(この書類はお昼までに提出で、これは...今からしよう、...あれ?これ、私のじゃない、...部長のやつだ。)
チラリ、と部長をみて、もう一度その書類を確認するけど...
(...うん、これ部長のだ。)
念積みの確認を終えると、部長の方へと書類をもち、歩き出す。
「あの部長...。」
部長のデスクの前でそう声をかけると、
「どうしたの甘利さん。」
と、少し微笑んで部長は言った。
「あの、この書類私のところに一緒に紛れてて、ですがこの書類、部長のものだと思うんですが...」
(怒られるかな...。)
内心ひやひやしながら私がそう申し訳なさげにいうと、
「えっ...あ、本当だね、危ない危ない。 甘利さんすぐに気づいてくれてありがとう。」
ははは、と、怒られるどころか、逆にお礼を言われてしまった。
「あ、いえいえ!あの、私こそ気づかなくてすみません...。」
「いやいや、気づいてくれて助かったよ。 この書類、今日の朝渡されたものだろう?今日から三日ほど地方に出張だから、今日中にしておかなければならないものだったんだ。」
そういうと、部長はもう一度微笑えんだ。
「ありがとう甘利さん。」