はやく気づけ、バカ。
__この、独特な空気を私は知っている。
「うん?どうしたの桐谷くん。」
ーーだけど、なにもわからないかのように私は桐谷くんに尋ねる。
真剣な顔をして、依然と桐谷くんは私のことを見つめている。
「...あの、俺、先輩に聞きたいことがあって。」
「あ、そういえば人前では聞きにくいことがある、って言ってたよね。それのこと?」
と、微笑んでそういうと、
「...はい、それのことです。」
と桐谷くんは、真剣な声色でそう言う。
ーー今、この会議室には、独特なあの空気が流れている。
...彼から目を反らすことができない。
よく見ると、彼の顔は少し、赤くなっている。
...なんだか可愛らしいと思ってしまった。
(...たぶん私も顔、赤くなってるだろうなぁ。)
「__単刀直入に言います。
俺、先輩のことがーーー」
ガチャリ、というドアを開く音に彼の言葉が遮られる。
えっ!?と二人ともドアの方を振り向くとそこにはーー
「...あ、あのイケメン。」
__そう、そこには今朝のエレベーターのあのイケメンがいた。
ぽつりとつぶやいたはずなので、誰にも聞こえていないはずだ。