はやく気づけ、バカ。


そうやって一人で悶々と考えている間ももちろん足は進むので、


(あ、着いた。)

マンションのエントランスが見える。



(...今日はそんなに遅くないし、ちゃちゃっと晩御飯作って、お風呂入って寝よう...。)

うんうん、と一人で頷いていると、エントランスの前で一人の人が立っているのが見えた。


その人を確認した瞬間、

(あ、そういえば今日は真島さんが用事で抜けたから、終電になりそう~!なんて、美乃梨がヤケになってたな...)

と、どうでもいいことを思い出した。


(...がんばれ美乃梨!)

と、ぐっ!とファイトの念を込めてポーズをする。

意識を頭から目に切り替えると、


エントランスに立っている人の背が高く、そして雰囲気から男性であることが分かった。


(...こんな時間にエントランスに突っ立っているって...)

もしかして強盗や、ストーカーなどの類(たぐい)なんじゃないか...と、嫌なことを想像する。




(...もし本当にそうだったらどうしよう...。)



近づきたくない、

そう思うが、体は正直に家に帰りたがっている。


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