はやく気づけ、バカ。


__言えなかった。

だって...

言おうとして見上げた真島さんの顔、少し眉間にしわが寄っていて、

いつもは少し、微笑み気味にあがっている口角が少しも上がっていなくて、


(も、もしかしてこれは...)

ふと、考えがよぎる。

(お、怒っているんじゃ...!?)

__そう、真島さんが怒っているように見えて、

彼に声をかける勇気が出なかった。


(あ、あああ、これは...!!!)

早く離れなきゃいけない、

そう思いどうにか離れようと試みる、が...

(...できない...)

__それもそうだ。

今は丁度通勤ラッシュの時間帯。

わたし以外にも押しつぶされそうになってる人は何人いるだろう、というレベルでこの車両は混雑している。

いや、混雑という言葉で済ませられないくらいだと思う。



(これは...申し訳ないけど、真島さんに頼るしかない...)


「す、すみません真島さん...」


もう一度勇気を出して真島さんの顔を見て、そう言う。


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