はやく気づけ、バカ。


「美乃梨こそ、お疲れ様。」


そう声をかけ、エレベーターに乗り込むと美乃梨も不思議そうな顔をして言った。


「珍しいね、菜緒がこんな時間まで残業って。

普段はもうちょっと早くないっけ?帰るの。」


「そうなんだけどね...」


私が何かを言おうとする前に察したのか、


「ああ...いま、うちの企画部が忙しいから、総務部にも仕事が沢山いってるってことか。」

と、見事正解を言い当てる美乃梨の顔には、確かに疲れが浮かんで見える。


「うん、そういうこと。美乃梨こそ、お疲れ様。

いつもご苦労様です。」


私が労いの言葉を伝えると、


「こちらこそありがとうね菜緒。

総務部のおかげで私たちが滞りなく仕事ができるから。」


逆に私が労いの言葉を受け取ってしまった。



< 6 / 139 >

この作品をシェア

pagetop