はやく気づけ、バカ。
「美乃梨こそ、お疲れ様。」
そう声をかけ、エレベーターに乗り込むと美乃梨も不思議そうな顔をして言った。
「珍しいね、菜緒がこんな時間まで残業って。
普段はもうちょっと早くないっけ?帰るの。」
「そうなんだけどね...」
私が何かを言おうとする前に察したのか、
「ああ...いま、うちの企画部が忙しいから、総務部にも仕事が沢山いってるってことか。」
と、見事正解を言い当てる美乃梨の顔には、確かに疲れが浮かんで見える。
「うん、そういうこと。美乃梨こそ、お疲れ様。
いつもご苦労様です。」
私が労いの言葉を伝えると、
「こちらこそありがとうね菜緒。
総務部のおかげで私たちが滞りなく仕事ができるから。」
逆に私が労いの言葉を受け取ってしまった。