はやく気づけ、バカ。
私の言葉を聞いた後、少し怪訝な顔をして
「あなた、甘利さんよね?」
と、確認するように私に尋ねた。
「はい、甘利ですけど...?」
どうして私の名前知ってるんだろう、と考えると内心気持ちが悪いと思うが、
そんなことをここで彼女たちに伝えると火に油に成りかねないので勿論しない。
(私の名前がわかるってことは...)
ここで私にはどうやって彼女たちが私の名前を探し当てたのかには、3つの考えがある。
まず一つ目、駅で知り合いに見られ、名前付きで彼女たちまで広まったというケース。ーー真島さんの人気を考えればないわけではないだろう。
二つ目、それとも写真を撮られて名前をほかの誰かから聞きだしたケース。ーーこれもまだあり得る。というかこれであってほしい、と思う考えだ。
(知り合いの誰かが故意に私を陥れようとしたわけではないのだから。)
そして最後、三つ目、私の名前を知っている誰かが彼女たちに告げ口をした、というケース。あり得るのはーー総務部の先輩?いや、先輩たちがこんなまどろっこしいやり方をとるんだろうか。
「貴方が今日駅のホームで”仲が良さそうに”真島さんと話してたっていうのを聞いたのだけれど。」
頭の中で理論を組み立てている間に、目の前にいる5人の内、リーダー格であろう人が”仲が良さそうに”の部分を強調して言った。