はやく気づけ、バカ。
ここ最近、あんまり顔を合わせていなかったからか、
駅に向かうまでの道に、花が咲く。
「それでね」
「うんうん。」
「今日もすごかったよ...あの人。」
げんなりした顔でそう美乃梨が言うから、
「あぁ、あの人...?」
もしかして...と確かめるように聞く。
「そうそう、真島さん...。
ほんとうにあの人、女性社員からの人気がすごいよ...。
もう、ほんとに鬱陶しいくらいにね。」
どうやら私の予想は当たっていたようで、
嫌気がさしたような顔で言う美乃梨に、同情する。
「たしかに、大変そうだねあの人は...。」
私もそう相槌を打つ。
ーー真島さん、というのは美乃梨と同じ企画部のやり手さん。
どんな企画も真島さんの手にかかると全てうまくいくんだとか。
そんな業績のいい真島さん、それに加えて彼の顔は...
「顔、すごくイケメンなんでしょ?」
美乃梨曰く、すごくイケメンらしい。
...と、いっても。
「はぁ~...なんで菜緒は真島さんの顔、知らないかなあ。」
私は一度も見たことがないのだけれど。
私がそういうと、本当に呆れたような顔で美乃梨は言う。
「真島さん、あんなに人気なのにねぇ...。」