『星が綺麗なあの場所で。』
それは二年前のことです。
まだ私、樋口莉沙が高校一年生の時の冬のこと。
「さっむーい! 莉沙は平気なの?」
莉沙に話しかけたのは、親友の杉本咲だった。彼女はいつも元気で莉沙とは中学の時から仲良し。
「私は今日結構な厚着してきたからね、咲が薄着すぎるんだよ」
そう言って莉沙が微笑む。
「今日ニュースで見たんだけどね!雪!降るらしいよー!」
莉沙は楽しそうに話す咲を見るのが好きで、つい咲を甘やかしてしまう。
「咲、雪降ったら雪だるまでも作ろっか」
「やったー!作る!」
そんなことを言いながら登校していると、学校のチャイムが鳴っているのが聞こえてきた。
「あ、莉沙!やばいよー、予鈴鳴っちゃてる!急がなきゃ!」
2人は小走りで走ってギリギリ教室に間に合った。
「杉本、樋口。ギリギリすぎだぞ!今度からは気おつけるように。」
案の定、二人は先生に注意された。
「いいじゃん!間に合ってるんだからー!」
「しょうがないよ、ギリギリ来たのが悪いんだから。ね?」
そして一日の授業が終わり、二人が帰ろうとした時、ふと空から白く冷たい雪がふわりと降り出したのです。
「でもこの程度じゃ積もらないよー!」
咲が積もらないと分かって先に帰ってしまった。
「一人だし、いつもの場所に行こうかな…」
雪だから見えないかも知れないけど行ってみよう。そう莉沙は思った。
いつもの場所は少し細い路地を抜けて、軽く坂を上り、赤い屋根の古い家がある丘。
赤い屋根の家には人は居なく、春になると桜の木の桜が満開になる綺麗な場所。
早く夜にならないかな。
莉沙はその場所には、いつも夜になってから行く。
「星、早く見たいな」
その丘から見える満天の星空を見るのが莉沙はとても好きで、最近ではほぼ毎日来ているくらい。
夕日が沈み、あたりが暗くなると星が輝き出す。
やっぱり綺麗だなー、あの星に手が届けばいいのに。
そんなことを思いながら莉沙が星を眺めていると、もう一人誰かが丘に来た。
「あの、俺も一緒に見ていいかな?」