『星が綺麗なあの場所で。』
想い
「失礼します、上村先生いますか?」
莉沙の呼びかけに上村が答える。
「待ってたよ、君に聞きたいことがあってね。」
私なにかしたかな? そんなことが莉沙の頭をよぎる。
「君、間宮と仲いいのか?」
優人さんのことを聞きにきたのかな、莉沙は疑問に思いながら答える。
「仲はいい方だと思います、でも学校で会うのは今日が初めてでした。」
会うのが初めてなのに仲がいいってどういう事だ?
と考えながら、上村が更に話を続けた。
「間宮は学年内ではいい評判がなくてな、でも実際はいい奴なんだ。これからも仲良くしてあげてくれ。」
「よかった、そんなことで。」
莉沙の口からポロっと出た言葉に、上村がポカンとした表情を浮かべる。
「あ、いや、なんて言うか何か怒られるのかなって思っていたので! もちろん仲良くしますよ!」
すると、上村が少し変なことを言い出した。
「まあ間宮もいい思い出作っておきたいだろうからな、よろしく頼む。」
いい思い出?卒業までのことを言っているのかな? そんなことを莉沙は思った。
だが、その日の夜。
「おまたせ」
そう言って優人がいつもの丘に来た。
「ううん、私も今来たところだよ」
今日の風は何故かとても冷たく、肌に少しチクチクと刺さるようだった。
「最初は学校の時といつものギャップに驚いたけど、学校の時の間宮さん結構カッコよかったですよ。」
その莉沙の言葉に優人が照れ、手で顔を隠した。
「そ、そう言えばさ、そろそろ敬語じゃなくてもいいよ? あと、もしよかったらお互いに名前で呼び合わない?」
優人が聞くと、莉沙の頬が赤くなり、OKと顔を縦に小さく振った。
そのすぐあとに優人が言った。
「学校での僕も見られたし、やっと莉沙と友達って感じになれたんだけどね。でも、莉沙に話さないといけないことがあるんだ。」
話さないといけないこと?それに何か優人さん悲しそうな顔してる。
莉沙はそう思いつつも静かに優人の言葉を聞いた。
だか、優人が発した言葉に莉沙の表情が固まる。
「僕、莉沙のこと結構好きだよ。けど明後日に引越すんだ。だからもうすぐ、この街から出てく。」
莉沙はどう返せばいいのか戸惑ってしまう。
「引越すって遠くに? え、会えなくなるってことだよね?」
優人の『好き』と言う言葉より、引越してしまうということに驚きを隠せなかった。
「この街の最後にいい思い出ができたよ。ありがとう。」
そう言い残して、優人は静かに帰ってしまった。
莉沙は訳も分からないまま、優人が帰ってしばらくしてから家に帰った。
そして、次の日。
莉沙も優人もあの丘には来なかった。