『星が綺麗なあの場所で。』
優人の引越しの日がとうとう来てしまった。
今日は日曜日で学校は休みだった。
「今日、引越しちゃうんだよね。」
莉沙がそんなことを考えながら外を歩いていると、自然といつもの丘に来ていた。
「優人さん、来るわけないよね。」
そう思った瞬間、後ろの方からガサっと地面を踏むような音がした。
莉沙が振り向くと、そこに居たのは優人だった。
「やっぱり、ここにいると思った」
優人がニコッと微笑み言うと、莉沙が優人の元に駆け寄り、ギュッと抱きついた。
「来ないと思ってた。行って欲しくない。」
莉沙は優人に抱きつきながら、思わず泣いてしまった。
優人も莉沙を包むようにギュッと仕返す。
二人はお互いにこの時間がずっと続いたらいいのに。そんなことを考えながらずっと静かにハグを続けた。
莉沙が泣き止むと、優人が話を切り出した。
「引越しちゃうけど、二年後にまたここに戻って来る予定なんだ。だから、だからその時、またこの場所で会おう。」
戻ってくる。その言葉に莉沙は喜びが隠しきれなかった。
「二年後の今日。またこの場所で会ってくれる?」
その質問に、莉沙は考える間もなく答える。
「約束する、絶対またここで会うって!」
二人は指を交わし、もう一度ギュッとお互いハグをした。
そして、
「またね」
そう言って莉沙と優人はお互いに家に帰ってしまった。
月曜日、莉沙は優人のクラスをもう一度訪ねたが、やはり優人の姿は無かった。